記事 : 袋帯とは?袋帯の歴史や特徴、格やコーディネートのコツなど徹底解剖!
袋帯とは?袋帯の歴史や特徴、格やコーディネートのコツなど徹底解剖!
フォーマルシーンを中心に活躍する袋帯ですが、実はカジュアルシーンでも活躍する「洒落袋帯」なども存在します。
袋帯は「名古屋帯」や「半巾帯」に比べると、着用する機会はそれほどないかもしれません。
その理由は「袋帯はフォーマルシーンで着用する帯」という認識を持っておられる方が多い為。
袋帯は礼装にあわせて二重太鼓を結ぶだけではありません。
母の袋帯も、娘の振袖なら変わり結びで華やかに。洒落袋帯なら、お召や小紋にあわせて使うこともできます。
今回は袋帯の歴史、特徴や種類、コーディネートについてまとめました。
袋帯の歴史
袋帯の歴史は案外浅く、昭和初期ごろに使われ、そして普及していったとされています。
それまでは、江戸時代中期に考案された「丸帯」が女性の第一礼装(いちばん格の高い装い)に合わせる帯として活躍していました。
丸帯は、広幅(現在の袋帯の2倍の幅|約70cm)で織られた帯地を2つに折って仕立てたもので、帯全体に渡って柄が入っており、その重さは約3kgにも及ぶほどになります。
丸帯は構造上、表裏、着付けたら見えない箇所に関係なく柄が入っており、非常に贅沢な作りですので、その分価格も高くなります。
時代は進み、明治、大正、昭和初期まで、戦争が度重なり、国内に物資が不足します。
そういった時代背景もあり、もう少し「手軽に・軽く・手の届く価格」で庶民にも買えるように開発されたのが「袋帯」になります。
袋帯は、丸帯の半分の幅(約35cm)の帯地を表とし、裏地には別の無地の帯地を合わせて仕立てる事で、コストパフォーマンスの高い帯となり、その後、六通やポイント柄など、様々なタイプの袋帯に派生していく事となります。
袋帯(ふくろおび)とは?
袋帯とは袋の形になるように織り上げられた帯のことです。
丸帯が1枚の大きな帯地を2つに折って縫い合わせるのに対し、袋帯は、仕上がり幅(約35cm)の表地と、無地の裏地を袋状に縫い合わせたものを指します。
袋帯の仕立て方は、大きく分類すると以下の4つとなります。
- 全通柄
- 六通柄
- ポイント柄(お太鼓柄)
- 本袋帯
「全通柄」の袋帯
表面の垂先から手先まで全体に柄の入った袋帯を「全通柄の袋帯」と言います。
全通柄の袋帯のメリットとしては「着付けで融通が効く」という点です。
特に振袖の場合だと、お太鼓結び以外にも「文庫結び」や「立て矢結び」など、様々な結び方をしても柄が自由自在に出せるので重宝されます。
また、お太鼓結びの着付でも、スリムな人でも、ふくよかな人でも体型に関係なく柄が出せます。
デメリットとしては「他と比べて価格が高い」・「帯が重たい」という点です。
染め帯と違い、錦織は柄の部分を全て先染めの糸で表現するため、柄が複雑になったり、長くなると、その分手間がかかります。
袋帯は、一般的に4m以上の長さがありますので、その全部分に柄が入るとなると、糸の量で重みが増し、かかる手間で価格が増します。
例えば、1日数センチしか織り進めれないと言われている織りの技法「爪掻き手織り綴織り(つづれおり)」などでは、50cm変わってくるだけで数十万円以上(※新品の場合)も変わると言われます。
「六通柄」の袋帯
表面全体に柄が入ったのが「全通柄」に対して、着付けた場合、表に見える部分にのみ柄が入っているものを「六通柄」と言います。
六通柄の六という数字は、六割柄が入っているという意味があります。
六通柄の袋帯は、お太鼓部分と垂先、手先、胴部分にのみ柄が入っており、それ以外は「中無地」と呼ばれる、無地の織物で、柄の部分と無地の部分が繋がれています。
六通柄のメリットは全通柄に比べて軽くて結びやすく、お値段も全通柄よりはリーズナブルな価格となっています。
シンプルな「お太鼓結び」であれば六通柄の袋帯がオススメです。
着付スキルの高い着付師さんであれば、六通柄の袋帯でも様々な結び方ができるそうです。
ご自身も着付スキルが上がってきたら、六通柄の袋帯でも充分かもしれませんね。
「ポイント柄(お太鼓柄)」の袋帯
ポイント柄の袋帯は、メインの柄が、お太鼓部分や胴部分にのみ入った袋帯を指します。
ポイント柄の袋帯は「お太鼓柄」や「飛び柄」とも言われます。
お太鼓結びをすることを前提として作られている帯で、メリットは「胴部分の柄を好きな位置に調整できる」そして「価格が比較的リーズナブル」なところ。
着付スキルの高い方なら、ポイント柄で好きなところに柄を出す事もできるそうです。
最近ではポイント柄を使って様々な結び方をされている方も多く見かけます。
ポイント柄の袋帯を使って様々な結び方をするのはオシャレ心を感じさせますね。
超絶技巧で織られた「本袋帯」
代表的な3種類の袋帯に次いで「本袋帯(ほんふくろおび)」というものがあります。
本袋帯の見た目は丸帯っぽく見えるのですが、非常に高度な技術を使った織り方になります。
一枚の大きな織り物を折り畳んで縫い合わせるのが「丸帯」で、表地と裏地を袋状に縫い合わせるのが「袋帯」、そして本袋帯は「表地と裏地が一体となっている一枚の筒状に折られている」ものを指します。
どういうこと?となる方も多いかもしれませんね。
本袋帯は、織り進める段階で、既に筒状になっているという事です。織り方としては、筒状にして裏返しの状態で織り進めます。
裏返しの状態で織り進めるので、仕上がってからでないと織り手本人であっても文様を見ることができません。
つまり、非常に卓越した熟練の技が必要とされるのです。
「なぜ、そんな手間をかけるのか?」という疑問を持たれる方も多いのでは?
実は、本袋帯の最大の利点は、その軽さとしなやかさにあります。
軽くてしなやかですので、締めた時のゴワつきもなく、長時間締めていても体への負担も少なく、そして、全通柄となるので体型やスキルを選びません。
市場に出回っている数は圧倒的に少なく、新品で買えば非常に高額な値段もするので、リサイクルで見かけた場合は、即チェックしておいた方が良いかもしれません。
袋帯の格
「帯は着物よりも格が高くなるように合わせるのが基本」と言われますが、これは、帯のほうが少し良いものを選ぶとバランスが取れるという意味。
「木綿の着物に袋帯」というような組み合わせは、やりすぎで、着物と帯は基本的には格が揃うように組み合わせます。
袋帯の格の序列は以下のようになります。
- 錦織りの袋帯
- 染めの袋帯
- 紬地の袋帯
ただし、描かれている柄などにも格があるので、ここでは袋帯の格について掘下げたいと思います。
「染め」より「織り」の方が格が高くなる
基本的には「染め」の帯よりも「織り」の帯の方が格が上です。
かといって、紬帯(先染め糸を使った織りの帯)は友禅などの帯よりも格が上かというと、そうでもありません。
「織り」の帯とは、一般的に「金銀糸や様々な色に染めた糸を使って文様を織り出す絹の織物」である錦織を指します。
吉祥文様や古典柄の方が格が上
同じ錦織りの帯でも描かれている柄でも格が変わります。
おめでたい意味を持つ「吉祥文様」や、貴族の様な高貴な身分しか使えなかったというルーツを持つ「有職(ゆうそく)文様」などは、一般的な柄よりも格が高くなります。
上の写真の帯は、織りの最古にして最高峰と言われる「爪掻き本綴れ」で織られた錦織りの袋帯です。
こちらは描かれているのが森林などの一般的な柄となるため、吉祥文様や有職文様よりは格が低くなります。
袋帯のコーディネートとTPO
袋帯には様々な種類があり、それぞれ格があり、そして合わせる着物、行く場所など、様々なTPOがあります。
ここでは袋帯のコーディネートとTPOについて掘下げたいと思います。
留袖や訪問着に合わせる袋帯
既婚女性の第一礼装となる「黒留袖」や、準礼装となる「色留袖」には、吉祥文様や有職文様など、古典柄が描かれた錦織りの袋帯を合わせます。
結婚式や披露宴などには、長寿や子孫繁栄など、おめでたい意味が込められている「吉祥文様」がオススメです。
記念式典など、セレモニー関連には有職文様をおすすめします。もちろん吉祥文様でも問題はありません。
有職文様には、唐草、立湧、亀甲、七宝など様々な物があります。
有職文様は単体で描かれている事が少なく、吉祥文様と有職文様が組み合わさって描かれているものが殆どです。
留袖に合わせる帯については以下の記事にも記載しておりますので、ご参考ください。
訪問着に合わせる袋帯
訪問着は略礼装となり、着ていくシーンでオススメの袋帯が変わります。
結婚式や披露宴などに参加するのであれば、留袖同様、錦織りの吉祥文様や有職文様がオススメとなります。
知人や友人など、少し気の知れた人とのお食事会やパーティーなどには「引箔」の帯もオススメです。
引箔は、和紙に箔をのせて柄を描き、その後に糸の細さに裁断して織り上げていく、非常に手の込んだ技法です。
上の写真の袋帯は、引箔地に金箔を漆で練り込ませた糸で織られる「金襴」や、貝殻を使った「螺鈿」などが施された、非常に豪華な袋帯になります。
色無地・江戸小紋に合わせる袋帯
色無地や江戸小紋も、一つ紋が入れば訪問着と同じ略礼装となります。
式典やパーティーなどでは、控えめな立場で参加する場合にはもってこいの装いとなります。
結婚式や披露宴など、おめでたい場所へは、留袖や訪問着と同様に、吉祥文様の入った錦織りの袋帯がオススメとなります。
また、色無地や江戸小紋で、控えめなにパーティーなどへ参加したい場合は、静かな柄の引箔帯がオススメです。
小紋・お召・大島紬などに合わせる袋帯
金糸や銀糸を使った華やかな袋帯は結婚式などのフォーマルな場で使いますが、見た目にもカジュアルな袋帯は「洒落袋帯」と言ってオシャレ着です。
洒落袋帯は、付下げや小紋はモチロン、大島紬や紬地の訪問着などとの相性が良いです。
まとめ
フォーマルシーンを中心に活躍する袋帯。
かといってフォーマルシーンだけではなく、カジュアルシーン向けやセミフォーマルシーン向けなど様々な種類の袋帯があります。
名古屋帯や半巾帯と比べると比較的価格が高くなりますが、リサイクル品の中古袋帯だと安価で手に入ります。
これを機に、様々な袋帯にチャレンジしていただき、コーディネートを楽しんでください。