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記事 : 大島紬とは世界三大織物のひとつ!産地や歴史、柄や染めの特徴を紹介 ~シリーズ紬 02~

シリーズ「紬」

大島紬とは世界三大織物のひとつ!産地や歴史、柄や染めの特徴を紹介 ~シリーズ紬 02~

しなやかな手触りとツヤが特徴の大島紬は、着物好きの憧れの着物のひとつです。その柄や染めは自然の恵みから生まれます。

世界三大織物にも数えられる大島紬の泥染めは、もともとは役人の目を逃れようとした咄嗟の行動から生まれた偶然の産物でした。

今回は日本三大紬のひとつ、大島紬の産地や歴史について紹介します。

大島紬の産地と歴史

大島紬の歴史と産地

大島紬は、鹿児島県南方にある奄美群島などで織られる絹織物です。もともとは紬糸で織られていましたが、大正時代には生糸で作られるようになりました。

他の紬と同じように、大島紬もかつては自家用として島民たちの間で親しまれていた着物でした。それが江戸時代に入るとその技術の高さから、貴重品として扱われるようになります。

1720年に「紬着用禁止令」が出されると、大島紬は薩摩藩への上納品となりました。この時代に、役人の目を逃れるために島民が大島紬を田んぼに隠したところ、光沢のある美しい黒色に染まっていたのが泥染めの始まりとも言われています。

大島紬の歴史

1877年に市場での大島紬の取引が開始されるようになると、大島紬の評判は全国へ広まっていきます。生産技術の向上や需要の定着を背景に生産が急増した結果、粗製品も出回るようになりました。

そうした品質の低下への対策として、1901年に「鹿児島県大島紬同業組合(現 本場奄美大島紬協同組合)が設立されました。

鹿児島県大島紬同業組合

絶大な人気を誇った大島紬でしたが、着物が日常着でなくなった現在では、生産量も大幅に減ってきているそうです

世界三大織物・大島紬の特徴

大島紬の生地

大島紬はフランスの「ゴブラン織」、イランの「ペルシャ絨毯」と並んで世界三大織物にも数えられています。その特徴は、自然をモチーフにした美しい図柄と艶やかな色合い、独特の手触り、軽やかな着心地です。

泥染めによる深い黒が印象的ですが、草木染めによる「色大島」、藍染を重ねた「泥藍大島」、爽やかな「白大島」など、色のバリエーションも豊かです。

その製作工程は30~40程で、いずれも熟練の技と技術を必要とします。まず締機 (しめばた) という織り機に木綿糸を張り、それを経糸にして、図案をもとに糸に括り糸を織り込んでいきます。こうしてできる布のような「絣筵 (かすりむしろ)」を染色するのです。これが、「大島紬は二度織る」と言われる所以です。

大島紬の「マルキ」とは、経糸の絣糸の数です。9マルキ、7マルキ、5マルキの3種類が良く知られていますが、一般にマルキが大きいほど柄が精密になります。

防染した生糸を車輪梅の煮汁で何度も染め、泥田に浸して揉み込む作業を繰り返すことで、染料と泥が化学反応を起こして艶かな色合いが生まれます。 染めた糸は、7cmほど織るごとに針で柄あわせを行いながら織り進められます。

こうして生まれた大島紬は丈夫で軽く、深い色合いと独特の美しい柄の着物に仕上がるのです。

自然から生まれる大島紬

奄美大島

大島紬の色や柄は、奄美大島の自然からつくられました。ここでは大島紬の代表的な柄と、染めの種類を紹介します。

大島紬の「柄」

大島紬の反物

大島紬の柄は、男性ものと女性ものにわかれます。いずれも産地である奄美大島の植物や動物、日常品などをもとにした図案です。

大島紬の代表的な図柄である「龍郷柄」「秋バラ柄」「亀甲柄」について、それぞれ見ていきましょう。

龍郷柄

龍郷柄

大島紬の代表的な柄と言えば、やはり龍郷柄です。龍郷柄女性ものの幾何学模様で、ソテツとハブがモチーフとなっています。金色のハブが、月の光でソテツの葉にとまろうとする瞬間を図案化したものだそうです。

これは江戸時代、「薩摩大島を最も表現した大島紬を献上せよ」と命ぜられた薩摩藩が作らせた図案です。その後、村人たちの手によって改良された図柄は、大島紬をつくっていた村の名を採って「龍郷柄」と名付けられました。

秋名バラ

秋名バラ

秋名バラ柄は竹で編んだザルをモチーフにした、女性用の図案です。

龍郷村の秋名地区では、生活用品のザルを「サンバラ」と呼んでいました。そのザルの図案した秋名バラ柄は細かな格子を組み合わせた幾何学模様で、格子柄の中にある十字が赤や青で織り出されることもあります。

龍郷柄と並ぶ、大島紬を代表する伝統的な柄です

亀甲柄

亀甲柄

六角形をつないだような亀甲柄は亀の甲羅を表します。大島紬では男性用の図柄です。

柄の細かさは一反の布の幅に並ぶ亀甲の数で表されます。本場大島紬には80亀甲から200亀甲まであり、数字が大きいほど柄が細かく、緻密になります。

亀甲柄は縁起の良い模様のひとつで、結納返し等でも活用される そうです。

伝統的な絣文様

大島紬の絣

大島紬には、ほかにも自然から生まれた絣文様がたくさんあります。

花や星をイメージした幾何学模様や島に自生するソテツバを文様化したもののほか、ウニのトゲから生まれた文様も。

奄美大島の自然は、2021年7月にユネスコ「世界自然遺産」 にも登録されています。大島紬の美しい柄には、奄美大島の人たちの自然への思いが込められているのです。

大島紬の染め

大島紬の泥染め

大島紬の特徴のひとつである泥染めですが、現代までに草木染めや色大島など、さまざまな染めの大島紬が生まれています。

大島紬の染めと色の種類を見てみましょう。

泥大島紬

泥大島紬

車輪梅の汁で染めた糸は、最初は薄いベージュ色をしています。染めを何度も繰り返した後で鉄分の多い泥につけると、車輪梅のタンニンが化学反応を起こます。これが、独特の風合いを産み出すのです。

化学染料と違い、自然の染料で染める大島紬は3、40年経つと酸化して茶褐色に変化していきます。その過程を楽しめるのも、泥染めの特徴のひとつです。

泥藍大島紬

泥藍大島紬

藍で染めた糸を泥染めにしたものを絣糸に、泥染めの地糸と織り込んで作られる大島紬です。絣部分が藍色に表現されます。

かつて鹿児島地方では藍だけで糸を染め、浅葱色の絣を織り出す「藍大島」という布も織られていましたが、色落ちがあることからあまり作られなくなりました。

草木染大島紬

草木染大島紬

大島紬には、車輪梅や藍以外の天然染料で染めたものもあります。奄美に自生するマングローブ、はぜ、コブナグサ、クチナシのほか、椎や梅、やまももなども染料として利用されます。

染料によって、さまざまな色合いの大島紬が生まれます。

白大島紬

白大島紬

白い糸で絣模様を出したり、先染めの糸を括った後で脱色してつくられる絣糸を織り出したりした白い大島紬です。また、白薩摩焼と同じ白土を原料として開発された染料で糸を白く染める「白泥染め」もあります。

色大島紬

色大島紬

絣糸や地糸を化学染料で染色することで、多彩な色が表現できるようになりました。グラデーションや鮮やかな色彩で織り上げられた大島紬は、天然素材の風合いとはまた違う、現代的な感覚で楽しめます。

大島紬の証紙

大島紬の証紙

大島紬の証紙には、「地球印」「国旗印」「鶴印」の3種類のうち、いずれかがつけられています。これらは産地を表した「登録商標」です。地球印は鹿児島県奄美大島、国旗印は鹿児島県鹿児島市、鶴印は宮崎県都城市で織られています。いずれも証紙には織り元の名前と検査合格印が押されています。

また、経済産業省認可の「伝統マーク」がついたものは手織りの大島紬です。

証紙の種類によって価格に差がつくこともありますが、これは優劣を示すものではありません。とはいえ証紙は「本物」の証ですので、大島紬を選ぶときの判断材料のひとつにすると良いでしょう。

大島紬のまとめ

大島紬は、丈夫さも特徴のひとつです。新品にはなかなか手が出ないときは、リサイクル品を上手に活用しましょう。大島紬は絹織物の中では水にも強く、リサイクル品にも状態の良いものが多くあります。

特徴のある艶と手触りは、なにものにも代えがたいものです。ぜひお気に入りの大島紬を見つけ、奄美大島の自然が産んだ魅力を味わってください。

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